【石井麻木】東北や震災のことで1円も貰いたくない。

その他 ラジオ
デミさん
デミさん

どうも、パンク大好きデミさんです。

Twitter:@Takenoco0803

Instagram:@demisansan

プロフィール:デミさんとはこんな人

今回は『【木内みどりの小さなラジオ Vol.6】ゲスト:石井麻木さん』の文字起こしです。

 

後編はこちら:

【石井麻木】無理しないと出来ないことがすごく大事だったりする。
(笑)でもやっぱり「無理しないでください」ってたくさんの声頂くし、すごく嬉しいですけど、その心配してくださる声だったりお客さんとかスタッフの子達が。でも無理しないと出来ないことって絶対あるんですよね。そう、無理しなきゃ出来ないことがすごく大事なことだったりするし。無理しないで出来ることだけだったら…ねえ…そんなことありますか?(笑)

 

被災地に寄り添う写真家・石井麻木の人となりがよく分かるラジオとなっております。

 

音声を聞いてもらうと分かるんですが、麻木さん、非常に優しい語り口なんです。

 

俺(細美武士)とTOSHI-LOWと麻木は3人で1つのクルーだから、一生。

 

さすが細美武士、とても素敵な言葉を麻木さんにかけたようです。

 

長いので前後編に分けますが、今回は前編です。

 

お時間がある方はぜひ音声でお楽しみください。

【木内みどりの小さなラジオ Vol.6】ゲスト:石井麻木さん
スポンサーリンク

石井麻木 被災地の写真を撮り始めたきっかけ

木内みどり:2011年3月11日以降のいついらしたのが最初ですか?

 

石井麻木:最初、福島に入れたのは2週間後です。

2日後、3日後に行こうとして、でも入れなくて。

 

車で行くにもその時ガソリンが東京でも一台1,000円までとかだったから入れなくて。

 

色んな人に頼んだんですけど。

「乗せてください」って言って。

 

みんなに、

「原発が爆発した直後だから女性は連れていけない」

「行かない方がいい」

って言われて誰も乗せてくれなくて。

 

そうやって自力でも行けなくて、やっと行けたのが2週間後だったんです。

 

木内:ともかく行って、録りたいと思った?

麻木:いやいやいや、全く撮る気はなくて。

 

最初は寒い時期だったので集めた毛布と食べ物と、お水をとにかく持っていこうと思って行こうとして。

 

全然写す気はゼロでした。

 

木内:知り合いもなく?

麻木:はい。

 

木内:で、まずどこへ行ったんですか?

麻木:2週間後に初めて入れた時は『風とロック』の箭内さんが連れて行ってくれて。

 

で、避難所5箇所一緒に回らせて頂いて。

福島中の避難所5箇所に食料や水や毛布を届けて。

 

その時、私カメラを毎日持って、毎日肩から掛けてるので、その時も、写す気はなかったんですけど掛けてはいたんですね。

 

隠すように持ってて。

やっぱりカメラは暴力になってしまうと思ってたので、こういう場所では。

 

でもそれを見た現地の方、被災された方が、声をかけてくださって。

この地獄のような光景を写してほしい。全国に伝えてほしい。

って言われたんです。

 

写真ってそういう役目もできるんだと思って。

「写させて頂いていいなら写させて頂きますね」

って言って、撮らせてもらうようになりました。

 

それでもカメラを向けるのは本当に怖いことだし、やたらめったら向けられる状況じゃないので。

 

着の身着のまま避難して来られてる方達にいきなりカメラを向けるのは本当に暴力でしかないと思ってたので。

 

実際そういう場面も見たんですよ、報道のカメラの、テレビの方で、「はい、撮るよー」って言っていきなりこうやって撮り始めた姿を…

 

「えっ!」みたいな、なるじゃないですか?なんですかいきなり!みたいに。

 

それがすごく悲しくて。

絶対にそれはしてはいけないと思って、写すつもりはなかったんです。



石井麻木 写真を始めたきっかけ

木内:やっと実現したんですけど、石井麻木さんにお会いしたのは、札幌で写真展に初めて入って。

 

写真を壁に…あれ何点掛かってました?

麻木:札幌の時は200か…小さいのも入れたらもうちょっと…

 

木内:なんだけど、壁一面の写真を見て1、2、3、4枚目くらいで既に涙がこぼれちゃって。

 

普通に福島とかの写真って週刊誌とかで見るじゃないですか?

 

で、見たんだけど麻木さんの写真だけなんでこんな風になるんだろうって思ったんですけど。

 

麻木:それはよく言われるんですけど。

普通の報道写真ではないから、そういうことはあると思うんですけど。

 

何度も通って…の表情だったり、風景も悲しい風景だけじゃないのも写したいと思ってるので。

 

そういう面もあるのかな、とも思うんですけど。

 

木内:今日も半日近くお側に居させて頂いて、近くで見ていると麻木さんって半分くらいいない感じが…

 

麻木:ねえ、そうなんですよ。半分くらいいない感じって。

 

木内:言われる?

麻木:言われます。そうしてるんです。

 

木内:もちろん細くていらっしゃるしスレンダーなんだけど、自分から何かを発してないという…

 

麻木:そうなんですよ、極力透明になりたいというか、思いがあって。

 

気配を消すというか。

なんて言えばいいんですかね、いない感じ。

 

木内:それは感じました。

麻木:あー、本当ですか?すごい!

 

木内:だから、人が撮られてるってことをあんまり意識をしないでその人自身でいられる…それで撮れちゃうのかねえ。

麻木:なるほど。そうかもしれないです。

 

木内:写真家になったのはお父様からカメラを?

麻木:そうですね、17歳の時に。

その頃は絵描きになりたくて、なろうと思ってて、美大目指してたんですけど。

 

両親が離婚した時に父親がカメラだけ置いていって。

NIKONの古いフィルムのカメラ、まだ当時フィルムで。

 

で、それを手にしてから絵を書かなくなって、写真ばっかり撮るようになっちゃって。

 

高校10日間休んで、それこそ東北に一人旅、来たんですけど。

 

木内:一人旅!?

麻木:カメラだけを持って、着の身着のまま行って。

その時写したのがすごく寂しい写真ばっかなんですよ。

 

遠くの人影とかちっちゃな猫とか(笑)自分の足元とか何もない空とか。

 

どれ見ても、その時寂しい心情だったからなんですけど。

 

「こんなに写真って心が映るんだ!」って思って、『写心』、『写す心』って。

 

木内:リスナーの方に説明しますが、『写真』は『写す真』と書きますが、麻木さんの写真は『写す心』、『写心』って言ってらして。

 

そんなこと言う人は麻木さんだけですよね?

麻木:いや、わかんないです。

他の人は聞いたことないですけど、こんなにも写るんだ、って思いました、その時。

 

木内:ということは17の時からカメラを通して世界を見るとか人を見るとかはその時に完成してた、というか今と変わらないって感じですか?

 

麻木:その当時はやっぱりまっすぐ人には向き合えてなかったと思うので、人にカメラを向けることは…

 

今は向けられるというか、まっすぐ見れるようになったので、そこは変わったと思います。

 

感性は変わってないと思うんですけど、人との向き合い方だけは変わったんじゃないか思ってます。

 

木内:で、あのー、事故が起きるまでというのは写真家としてミュージシャンとかアーティストを撮ってらした?

 

麻木:はい、撮ってました、音楽と映画と、あと本の表紙だったり、そういう…

 

木内:売れっ子の写真家さんだったんですね。

麻木:いえ、とんでもないです、そんな、全然です。

 

木内:撮ってるものは震災後も震災前もほぼ変わんないんです。

麻木:音楽と子供と空(笑)好きなものは。

 

木内:音楽と子供と空?

麻木:はい、それが多いですね。

 

木内:麻木さんが撮ると空いいですよねえ。

麻木:ありがとうございます。

好きなんですよ、一回も同じ時ないじゃないですか?

 

なんでもそうなんですけど空は特に表情がくるくる、色んな表情を見せてくれる。

 

それが昔から、子供の時から空になりたくて

 

木内:空になりたい?

麻木:(笑)空になりたかったんですよ。

こんなに、自由だけど、色んな表情があって。

羨ましかったんだと思います、空が。

 

木内:空が羨ましい(笑)

麻木:(笑)そう、ずっと空になりたいって言ってましたね。

 

木内:麻木さんほんとに美人だし細いしセンスもいいし。

なんかこう、自分が出るみたいな…役者とかそういう…

 

麻木:ほんとに顔も名前も一切出したくなくて、今でも。

さっきも、透明になりたい、黒子でいたいっていうのはそういうことなんですけど。

 

写真展も、できれば自分の名前も出したくないし、取材を受けるときもなるべく自分は映らないようにしてもらってて。

 

木内:面白い。

普通そんな美貌があればなんか「女優さんになりませんか?」とかそういう話もないですか?

 

麻木:いやいやいや…透明人間でいたいです。

 

木内:でも、写真を発表するってことはご自身の何かを発表することだし。

 

麻木:そこにはもう責任もついてきますし、もちろん。

覚悟も必要だし。

そんな、誰のかわからない作品をぼーんって見てください、なんてそんな無責任なことは出来ないからもちろん名前も出しますし、見てください、って思うから出してはいるんですけど。

 

木内:じゃあこのラジオに出るのもあんまり嬉しくはなかった?

 

麻木:(笑)いやいやいや、私本当に喋るのが下手だから写真を撮ってるんですよ。

 

本当に苦手で、昔から喋れない子供だったから。

 

木内:どちらかと言うと内向的な子だった?

麻木:もう、内向的で、今でもそれは変わってないと思いますけど。

 

そう、喋るのが苦手だから絵を書いたり写真を撮ったり文字を書いたりして過ごしてきて。



石井麻木 写真につける言葉について

木内:なんか、作詞もされる?

麻木:作詞って、歌詞ですか?

しないです、しないです。

 

木内:でも、いい詞が書けそう。

麻木:写真展で一枚一枚写真に付けてる…

 

木内:あれは藤巻さんが書いてらっしゃるのね。

あれがあって、いいですもんね、ピタッと来るっていうか。

 

麻木:そう、やっぱり写真だけではその震災に関しては伝えきれないことを思い知ったので。

 

こう、写真一枚見て、「はい、これ、こうなんでわかってください」っていうんじゃなくて。

 

例えば現地の方の生の声だったりその時の状況だったり、私が感じたものになるんですけど、そういうのは一言添えると余計、ちょっと広がって觀てもらえるかなっていうのがあって。

 

もう、なんだろう、ドキュメンタリーというか、本当のことを伝えたいので。

 

その、伝えられるものは全て使って伝えたいと思ってて、普段は付けない写真に言葉を付けたり、トークショー、苦手なトークショーしたり(笑)。

 

そう、使えるものは全て使って伝えるようにしています。

 

木内:私は見せて頂いた写真展は、ああいう形のは日本全国でやってらっしゃる?

 

麻木:そうですね、もう何箇所目なんだろう?15とか6とか17箇所くらいになるんですかね。

 

木内:写真展をする費用と、入場料と、写真展をする関係の収支はどうなんですか?

 

麻木:(笑)入場無料で貫きたいので。

やっぱりふらっと入ってきた、通りがかったおばあちゃんとか子供とかにも見てもらいたい気持ちがあって。

 

木内:ずっと入場無料?

麻木:ずっと入場無料でやってきてて。

なので会場費もパーテーションのレンタル費も発送費も、作品、パネルを作る制作費ももちろん全部自腹でやらなきゃいけないので。

 

この7年続けてきてるんですけど、最近ちょっとずつ規模が大きくなってきたのもあって、あと作品がどんどん増えてるのもあって、桁がすごいことになってるんですね(笑)そのうちの自腹の額が(笑)

 

で、この前、神戸での写真展からドネーション(寄付)をお願いさせて頂いて。

 

入場料はこれからも無料、だけど、もし、賛同してくださるなら1円でもお気持ちをお願いできたらと思って始めさせてもらいました。

 

木内:私のこの小さなラジオもね、スポンサー無しでやるっていうのがあれだったんですけど、3回目くらいから、何も寄付したいって人を拒むことはないじゃないか、っていう風に言われて。

 

口座を作って、もしそういう人がいらしたら、っていう受け皿は作ったんですけど。

 

ちょっとその辺は似てますね。

麻木:似てますね。同じですね。

 

木内:だけど、細美さんが、「自腹を切ってでもすることではない!」って仰ってて。

 

それもわかるし。

麻木:それもわかります。

そうなんですよ、すごくわかります。

 

木内:だけど、よく、女の細腕一本で7年8年にもなろうことを自腹でずっとやってきてるってすごいですよね。

 

麻木:もう、なんですかね。気持ちだけがずっと強くあって。

どうしても東北のことや震災のことで1円も貰いたくないんですよ、やっぱり。

 

本当に、利益としては1円たりとも貰いたくない、っていう思いが消えないので。

 

これから先もずっとそれは消えないと思うから。

写真集(の収益)を全額寄付させて頂いてるのも、この写真展とか写真集で1円でも貰っちゃうと何かが崩れてしまう気がして、自分の中の。

 

それだけは誰に怒られようが(笑)「経費分くらい取りなさい」って散々怒られたんですけど、曲げない(笑)

 

頑固なんですかね?(笑)そこは曲げれないんです。

 

木内:なんか嬉しい。

私も頑固と偏屈ってしょっちゅう言われるの(笑)

 

やっぱり本を出したのもね、500円で、売れば売るほど赤字という…

 

麻木:売れば売るほど赤字という…

 

木内:800円ね(笑)。

Amazonに至っては7掛け?350円なので、Amazonまで私は送料いるので、私は丸々1,400円くらい赤字になっちゃうんですよね。

 

麻木:馬鹿ですよね(笑)

 

木内:でも今、カネカネカネカネ、金が貰えればなんでもするっていう世の中で、私や麻木さんのような人が頑固に踏ん張ってるっていうのが嬉しくなっちゃう(笑)

 

麻木:そうですね、馬鹿ですけどね(笑)本当に思いますけど(笑)

 

木内:でも、やれてるし、楽しいし。

麻木:そうなんですよ、やりたくてやってますからね。

全然義務感だったりそういう、何ていうんだろう、まったくそういうのないですからね。



石井麻木 本当のその人が写ってる写真が取りたい

木内:なんか麻木さんの撮ったミュージシャンの写真なんかも…

ま、ミュージシャンってだいたいカッコイイわけじゃないですか?

 

かっこいい写真があるわけなんだけど、でも麻木さんが撮った写真はまた違うんですよね。

 

麻木:私は人を撮りたいんですね。

まあ音楽もそうなんですけどその人が見える写真?その人が透けて見える写真、その人の中身を写したくて。

 

よく言われるんですけど、「本当のその人が写ってる」っていう言葉は一番嬉しい言葉で。

 

で、細美さんやTOSHI-LOWさんはよく一緒に東北で一緒になることが多くて、仮設住宅のお母さん達や子供達と一緒に触れ合う姿も写させてもらってるので。

 

そういう時は完全に素の表情が出てるときじゃないですか?

 

普段どんなにかっこよかったり怖いイメージがあったとしても、本当の優しさが出ちゃってる、本当の大きな愛が出ちゃってる瞬間を写して(笑)もうそういう優しいところもバラしちゃおうと思って(笑)

 

木内:なんかハードなロックとかとはぜんぜん違う面…

 

麻木:違う面…間逆なのか本当は一緒なのかわかんないですけど、両方、全部の面を写したいなとは思ってて。

 

多分それが写ってるから、ちょっと違うのかな、と思ってます。

 

木内:細美さんとTOSHI-LOWさんとがステージの上と下にいて、トレーラーにもなってる写真、ほんと私好きで。

 

2人が大人なんだけど、なんか5才児くらいの感じもするし。

 

麻木:そうなんですよ(笑)私から見ても5歳児に見える時があって。

 

あの写真は3人で東北を、5箇所かな、回った時に、3日間で5箇所で歌ったんですよ。

 

木内:えー!

麻木:3人だけで回ったんですよ、一切他のクルー、スタッフ無しで。

 

2013年かな、回った時の写真で、1台の車で。

 

木内:なんかお金には全くならないけど、人との絆とか深い深いものがありますよね。

 

麻木:はい。みんなもう震災後、一番大きな得たものというか。

 

木内:お金で買えないですよね。

麻木:買えないですね。お金で買えないものを頂いた気がしています。

 

頂いたというか一緒に作ったというか。

この前、そう、the HIATUSのツアーファイナルの、終わった後に、細美さんがすごく嬉しいことを言ってくださって。

 

「俺とTOSHI-LOW麻木は3人で1つのクルーだから、一生。」

 

って言われて。

 

木内:もう涙が出そう。

麻木:そんな嬉しい言葉、ねえ、あるんだって。

友情…どんな言葉でも表現が難しいんですけど、表現するのが。

 

対等に見てくれてるのがすごく嬉しくて。

女扱いもしないし。

 

その、何ていうんだろう、本当に対等に見てくれてる、TOSHI-LOWさんも、細美さんも。

 

それはすごく嬉しい言葉でした。

コメント